コラム

まずはこれだけ-管理の考え方(後編)

2017年10月04日
中小企業診断士 河合初雄

 後編では、前編の最後に触れた「管理」において重要な「継続発展」について説明していきたいと思います。
 「継続発展」するためには、「品質」「時間」「数値」の3点をどういった状態にする必要があるのでしょうか。
 下図はそれを簡単にまとめたものです。



 例えば、以下の①~③のケースを考えてみてください。
①加工時間、勤務時間及び原価は計画通りだが、不良率が向上し、かつ品質のバラツキも大きく、早急な解決が見込めない。
②品質は良好で、原価も計画通りであるものの、納期対応が困難で、加工時間のバラツキと時間外勤務が増加している。
③品質は良好で、加工時間、勤務時間も計画通りであるものの、原価の増加、乱高下が続き、資金繰りが困難である。

 この①~③は極端な例ですが、いずれも早急に解決しなければ、いずれは他の2点にも波及し、さらに厳しい運営を余儀なくされることからも、業務を「続ける」ことは極めて困難となるでしょう。
 とはいえ、「品質」を向上し続ける。「時間」もどんどん下がり続け、そして「数値」も良好な数値を更新し続ける。 という状態もまた、続けていく上で、従業員の急増や負担増加、投資・費用の増加等、どこかに無理が生じてきて破綻を招いてしまうでしょう。
 では、どのようにすればよいのでしょうか。
 次の場合はいかがですか。
①品質のバラツキが大きいものの、検査の応援対応によって時間への影響がなくなり、不良品の外部流出を避けられた。
②時間外勤務が増加しているものの、品質が認められて正規の原価で取引ができるようになり、粗利が向上できて、社員にも還元した。
 この場合ですと、3点全体でバランスすることで、競争力を維持できる状態になったといえます。
 このように御社の生産ノウハウを活用し続けるには、競争力の要素である「品質」「時間」「数値」のトータルバランスを配慮しながら、「継続発展」する必要があります。
 ところが、実際の経営では、社外からの影響を受けることや、3点うち1点に悪さがあれば、すぐに他の2点にも波及することから、 バランスするのは困難です。そこは解決の順番と重点をどこに置くかが考えどころとなるでしょう。これはある程度センスが必要であると考えます。

 従って、競争力を維持し続けるには「管理」が必要となってきます。そして「管理」するときにはキーワードと「継続発展」という考え方を持って取り組むことが必要だと私は考えます。
 「管理」と考え方が定着していた好例として、私が昔いた部品の電着塗装を行う生産現場での事例を取り上げます。
 主力製品を電着塗装工程の後、全数検査工程に回す作業で、電着塗装の工程内と全数検査工程で塗装品の過半数が不良品という状況が毎日続き、手直しが常態化し、 長時間の時間外勤務を余儀なくされる状況が続いていました。
 それでも不良品は検査工程で絶対に止めるという強い意志で不良品の社外流出を防いでいましたが、 ついに社外に不良が流出してしまい、貴重な検査人員が選別に行かざる得なくなり、よもや現場はパンク状態に陥りました。
 多忙を極める中でしたが、それでも品質チェックシートや稼働時間の集計は的確に行われていたため、不良の発生源・流出源対策や検査の標準化と簡易化に必要な、現状把握と分析ができたことが幸いでした。
 パンク状態を休日フル出勤でしのいだ後は、まず「時間」と「数値」を妥協して、検査人員、手直し人員を増加することとして、 こうして不良品流出防止と作業者の負荷を軽減させ、その間に冶具の角度を改善することで、塗装製品の不良発生率を大幅に引き下げ、「品質」を回復することができました。
 約2か月かかりましたが、再び継続発展できる状態になりました。しかし、最悪なのは状況を放置してしまい、この状態が常態となった場合や、「管理」が骨抜きになってしまっており、 正確な現状把握が困難な状況となった場合です。この場合、塗装課人員の疲弊、他の製品への悪影響の拡散、最悪は失注等、「続ける」ことは非常に厳しい状況に陥るでしょう。



 「管理」のノウハウは、その出来不出来が内部で長く業務なさる方ほど、見えにくくなってしまうという特徴があります。
 そのため、①御社の「管理」をできる限り客観的な視点から再確認すること。②品質」「数値」「時間」のキーワードを活用し「継続発展」の考え方を定着すること。
 平時であれば、まずはこの2点だけで大丈夫でしょう。御社のノウハウの点検をお勧めします。


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