コラム

まずはこれだけ-管理の考え方(前編)

2017年8月30日
中小企業診断士 河合初雄

 製造業で働かれる方は、日々それぞれの方法で「生産管理」や「品質管理」をされていることと思います。 「管理」の方法・手段は数多く発信されていますが、実は方法・手段よりも「管理」の根本的な考え方が定着している場合と、そうでない場合ではその効果に大きな開きが出てきます。
 私自身が様々な現場で働き、また見させて頂きますと「管理」が行き届き、必要限度の方法・手段で狙う成果を出される企業は、共通点として、全社的に「管理」の考え方が定着しています。 そこで、今回は方法・手段ではなく「管理」の考え方について焦点をあてていきたいと思います。

 「生産管理」や「品質管理」をはじめ、「管理」とは、続けるためのノウハウだと私は考えています。そして続けるには、日々の変化に適応しながら成長発展していくことが必要です。 従って、「管理」をする上での根本的な考え方は「継続発展」であると言えます。
 続けるのは「生産管理」や「品質管理」の場合でしたら、御社独自の生産ノウハウです。 そのノウハウから生み出される製品が、顧客にとって価値が高く、競合に比べて優れた価値を持っていれば、競争力が高いと評価されます。 こうした競争力の高さを示す要素としては、「QCD」というキーワードが一般的です。
 「QCD」とは、Qは「品質(Quality)」、Cは「コスト(Cost)」、Dは「納期(Delivery)」を示します。それぞれが競争力の重要な要素であり、「管理」の対象もここに集約されます。
 私は経験上、この「QCD」を「品質、数字、時間」と換言して活用しております。このキーワードは、私が生産・管理業務を観る際には、常に頭において、考えの始点として活用しています。

 それぞれの定義ですが、まず「品質」は生産現場で日々の業務を行う方の場合、特に「品質」というキーワードは、物の良品・不良品という視点に偏る傾向があります。 しかし改善活動は、物だけでなく業務の「品質」の方を重点的に考えて頂く必要があります。そこで私は、「品質」は物と業務双方を指す概念として定義しています。 なお、業務の「品質」とは、作業に内在するムダ・ムラ・ムリを除去することを中心に据えて考えていきます。
 次に「数字」ですが「コスト」というと、まず金銭に思考が向かいがちになります。 ところが、金銭を扱わない業務の方は、考えの始点とならないケースが多く、逆に工数、人数、スペース、設備の台数、在庫数、稼働率、安全性、保全性という、 自身の業務に直接関連する数値化可能な管理項目を広く見ることで、思考が働くケースが多くみられます。 課題によって、目標とする「数字」が変わることや、数値化できる対象をできる限り、広く考えることを重視するため、私は一般の「コスト」ではなく「数字」と定義しています。
 最後の「時間」につきましても、「納期」の対応も含めて、稼働時間の長短や、バラツキの大きさや時間外勤務等、時間について幅広く考える方が、問題設定や解決策を出す上で扱いやすいため、 「納期」ではなく「時間」と定義して考えています。
 以上が各キーワードの定義です。これらのキーワードは、定義を共有することと、それを頭に置いて思考の始点にするために役立ちます。 キーワードを頭において、改善や管理を行うのと、そうでないのでは気付きや思考の質と量、時間は大きく差が開きます。
 このように「品質」、「数字」、「時間」の3点が競争力の源泉であり、また「管理」する対象となります。
そして「管理」の考え方は「継続発展」です。では、「継続発展」するためには、3点がどういう状態である必要があるのでしょうか。
 下図に簡単にまとめています。



 後編で、この「継続発展」について説明していこうと思います。

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